ギターの三輪崇雅、アコーディオンの原田忠、ベースの戸川智章の三人によるジプシージャズバンド、モンジュー。結成して二年が経ち、この夜は過去最高の演奏だった。
オープニングは「It's maybe so」そして「夜明けのシャノワール」でメランコリックにしっとりと始まり、そのあと「オレンジバス」「ダヤンの雨」といった馴染みのあるオリジナル曲が続くのに、なぜか初めて聴くような新鮮さ。
以前に比べて音が分厚くなっている。そして今回は、三人のパートがそれぞれ立ち上がるようなアレンジのせいか、より重層的に音を楽しめた。
三人は、どちらかというと静かなキャラクターで、演奏家としての個性を客に押し付けるところがなく、それがこのバンドの品格のあるところだが、こうしたひとりひとりの音自体がしっかりと立ち上がり、「会話」を聴かせてもらえると、芳醇な時間を味わっているという実感がこみ上げてくる。
そもそもジプシージャズ、いわば「バル・ミュゼット」という音楽は、フランスにやってきたイタリア移民たちが、アコーディオンを中心とした少人数編成のバンドを組んで、カフェなどで演奏したものだそう。
おいしいワインやカフェを飲みながらゆったりと聴くのにふさわしい、日本にはない大人の音楽で、なぜかといえば、日本には大人の官能性を表現する感覚が育たなかったからだ。
それをこんなに若い三人が・・・と初めは驚いたが、加速度的に成長している彼らを見ると、新しい世代には成熟した感覚が芽生えているのかも・・・と嬉しくなる。
後半、モンジューのアレンジによるスタンダード・ナンバーは鳥肌が立つセクシーさ。
バンド一のセクシー男、原田忠のアコーディオンがうねる。
時折、それを嬉しそうに見る「歩くガンダーラ美術」三輪崇雅の表情もとても色っぽい。
ポーカーフェイスの戸川智章のベースも、存在感がぐっと大きくなってきた。
アンコールは、宝塚のラストにも使われるオーストリア楽曲「スミレの花咲く頃」。
ボレロのアレンジで演奏されたそれは、かつて聴いたことのない、官能的で哀愁のある、けれど若々しいエネルギーに満ちた、モンジューにしかできない音楽だった。
10月からアニメ「のだめカンタービレ」の音楽にも参加するというモンジュー、かつて日本になかった真の大人の音楽をもたらして、もっともっと活躍してほしい、と願う。